日本では洋服の導入以来、紙で作図をしパターンを作る洋裁法が一般化しています。
『立体裁断法』が最も理想的であると理解されていますが、それが作図法を凌駕するまでには至っていません。
寸法を信じ、寸法だけに頼っている昨今では、まだ『プロの立体裁断』とはいえないと思います。
布地は縦糸と横糸の交差で織られています。服は、その布目のハング(下がり方)状態を眼だけで正しく操作できるようでなければ立体裁断をマスターしたとはいえません。服作りの難しさは、デザインだけでなく、布地の構成と人体の筋肉構造の操作も度外視できません。
『立体裁断』はパリのオートクチュールのテクニックであり、それをマスターする為には寸法のみに頼るものでなく、感性の育成と見る眼の養成がもっとも大切ですが、その他にもキャリアなどすべてのことがその原点となります。
昭和24年伊東茂平先生の研究所を卒業。
39年春に渡仏してECOLE DE LA CHAMBRE SYNDICALE DE LA COUTURE PARISIENNEで5年間西洋の洋裁を学び、卒業後は30年間パリモード界に君臨したバラン・シャガ氏率いるBALENCIAGA社に就職。帰国後、45年、東京立体裁断研究所設立。平成23年8月没。満90才。
バラン・シャガ氏が引退をされた昭和43年まで伝統あるオートクチュールのアトリエでCoupe(フランス語で“裁断”)の実態の研究をしてきました。今日の洋服の原型が13世紀頃に生まれ同時にその洋裁の歩みと共に発展してきたCoupeの長い歴史を紐解く時、西洋の洋服文化の流れと現代との深い絆を思わずにはいられません。